延命治療の選択をどうするか


Top > 自宅で最期を迎えるには > 延命治療の選択をどうするか

延命治療の選択をどうするか

延命治療のいろいろな方法

延命治療のいろいろな方法 延命治療は、病気の完治を目指す治療法ではなく単に延命のためだけの治療法です。ただし、極めて稀ですが、植物状態の患者を延命させ続けた結果、問いかけに反応するまで意識が戻ったという例もあるようです。医療ではなく、生命力が起こした奇跡かも知れませんが、延命治療が全くのムダと言い切れない問題があります。

延命治療は、医学の発展と共に広く行われてきましたが、延命治療によって病気の回復が見込めないのに患者自身が長い期間苦しむ可能性があること、家族もその状態を見ていることが辛いことなどから尊厳死に対する意識が強まったこと、単なる延命のためだけに医療費の負担が大きくなるという経済的な問題から見直されてきています。

延命治療法として以下のような方法が行われます。

1)人工呼吸
自力で呼吸できなくなれば、昔は死を待つより方法がありませんでしたが、今は人工呼吸器で延命させることが可能です。

2)人工栄養・水分補給
自力で栄養分を摂取できなくなる、食べることができても誤嚥して窒息や肺炎を起こす場合に、人工栄養・水分補給することで栄養摂取できて延命が可能になります。

2-1 経腸栄養法(経管栄養法)
胃や腸で栄養分を吸収できる場合に用いられます。
・胃ろう栄養法
胃に開けた小さな穴から胃に直接、流動食、水分、薬を送り込みます。
・経鼻経管栄養法
鼻から細いチューブを入れて胃に直接、流動食、水分、薬を送り込みます。
・食事の都度行う経鼻経管栄養法

2-2 静脈栄養法
胃や腸の働きによる栄養・水分吸収ができなくても直接、血液に送り込む方法です。
中心静脈栄養法と末梢静脈栄養法があります。


終活と延命治療

終活と延命治療 新聞の調査によると死に際して心構えを準備しておきたいことに、延命治療は、1位の身の回り品の整理についで2位に入り、約半数強の人が延命治療を挙げています。病気でもない時から延命治療を考慮するのは現実感がありませんが、延命治療は延命と引き換えに身体に大きな負担をかけることを理解して、どう対処するかの意思表示を明確にしておくことは大切です。なぜなら、高齢となって、あるいは病気で明確な意思表示ができなくなることがあるからです。そのときのために、家族に対して、あるいはエンディングノートなどで広く第三者にも延命治療に対する考え方を明確にしておくことは終活上も重要です。

高齢化社会の進展で高齢者の延命治療は今後、治療費の増大を招くことが財政的に懸念されています。折しも自民党の麻生副総理が「無駄な延命治療はしないでさっさと死ね」的な発言があり大きな問題となりました。個人の意思を尊重した尊厳死の陰で、少しでも生きたいとする個人の意思を国が建前は別にして本音で「さっさと死ね」的な発想をしていることは尊厳死に対する逆の問題を引き起こす可能性があります。

厚生労働省の行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」で、胃ろうを望まない人が7割以上いることが分かっています。しかし、その一方で、終末期の延命治療方針を明確にしている人は数パーセントしかいません。明確な延命治療に対する考えが無いのに、胃ろうは最初からしたくないというのは、漠然と延命治療は受けたくないという考えが根底にあって、胃ろうは回復の期待が全くない患者に対して行われるものであるという誤解があるように推測されます。

延命治療を受けたくないというのは個人の意思であるので、それに誰も異論をとなえることはできません。ただ、延命治療に対する正しい知識をもって判断しないと国や他人の言動に惑わされて、生きたいという権利を失いかねない危険性も上記のことから伺えます。